10ヶ月ぶりに第二の故郷、神戸へ行くことができた。照明家 三浦あさ子さん主催のダンスボックス照明研究会2020 ソロダンス トライアル公演で踊るため。あさ子さんにお誘いいただけなかったら、私はまだまだ神戸に行けなかったと思う。
久しぶりに着いた新神戸駅。降り立つと、あ~この感じという空気感。自粛中からずっと帰りたいと思っていた場所に帰ってこれてホッとした。少し綺麗になった新神戸駅から地下鉄に乗り新長田へ向かった。
新長田駅に到着し、地上に出るエスカレーターに乗ると、いつも2012年8月にダンス留学の為でかいスーツケースをひいて到着したことを思い出す。希望いっぱいというよりは、全く知らない土地へ移り住む不安と緊張のほうが大きかったように思う。あれから8年、何度新長田を訪れても少しだけ緊張し、そしていつも嬉しい。駅前広場は相変わらずの時間が流れていた。

いつもお世話になる大谷家のお二人、そしてアンと小夏(猫姉妹)に会えて夢みたいだなーと思った。色々な人から話を聞いたら、新長田は自粛中も比較的日常と変わりない時間が流れていたらしい。きっとどの土地でも個人差はあるだろうけど、東京の自粛は結構シビアだったと感じていた(いる)私にとっては、なんだか自分だけ浦島太郎的な、そんな気持ちにもなった。何年も会えないと思っていたから。実際、今回行くのもとても緊張していた。自分が行くことで大切な人に何かあったらと考えると怖くて。くしくも今回の滞在中、ひどい腹痛に見舞われた私は、緊急外来に行くことになり(東京から来ていることを告げると何度か断られた)、もれなく唾液検査もした。結果が出るまで気が気では無く、睡眠不足に。。。結果は陰性。安堵して叫んだ。結果が出た後は少し安心できたけど、いつ何時何があるかわからないから、引き続き怯えている。


照明研究会のソロダンスでは、普段あまり使わない曲たちを使用した。https://youtu.be/3aLyiI2odhU
「雨の街を」を自分で歌った音源
私は今回、照明家 茂木紀恵さんとペアになり、約1ヶ月様々なやりとりをして本番にのぞんだ。日頃から、照明家の方と一緒に作品を作りたいと考えていたので、実践できる貴重な機会だった。普段はどうしても作品ありきで照明をお願いすることが多い。今回はそれではなく、15分という持ち時間をどう使うか、どんなソロダンスを立ち上げるかも照明がきっかけだった。茂木さんと初めて電話で話した日、「トラスを下ろすことができるよ」と言われた。そこが今回の出発点だった。茂木さんには以前、振付作品「どこかで生まれて、どこかで暮らす。」の初演と、たぶん「アパートメント」というソロ作品を観ていただいていた。その時茂木さんは、自作品には天井が高すぎるのでは?と感じたらしい。だから、私の体を空間が狭い(天井が低い)ところで観てみたかったのだとか。トラスを下ろすことを前提に、3つのシーンを構成した。ギリギリまで決まらない振付に、根気強く付き合ってくれた茂木さんに感謝。茂木さんのアドバイスで振付を変えたりもした。
茂木さんは茂木さんの試みを、私は私の試みを実践した。今回の私の試みは自分の為に踊ること。作品の為ではなく、私の為に必要な踊りを選んだ。今それをしないと生きていけないと思った。3つ構成した最後のシーンは、私にとってダンサーとして闘っていた大切な作品 ショーネッド・ヒューズ「青森プロジェクト」。https://reinakimura.com/2020/06/13/as-a-dancer/2/
ショーネッドにも許可をもらい、約3年ぶりに一人で6分ほど踊った。どうしても思い出したかった身体と時間。ショーネッドや一緒に踊っていたメンバーはどこにも居なかったけど、私の身体に染み付いた振付や時間は、一瞬だけどどこかへ連れて行ってくれたように思う。踊らなくても生きていける人がいることも、ダンスがなくても生きていける人がいることも知っている。でも、そうじゃない私のような人もいる。切り捨てられてしまうことを、無駄だと言われてしまうことを諦めたくない、絶対に諦めない、そう思って踊った15分だった。昔のように身体も動かないし、美しくないなって思うけれど、それでも踊ろうと努めていきたい。

滞在中、ダンス留学の同期メンバーや様々な人と言葉を交わした。10ヶ月分一気に喋った。みんなそれぞれの場で、悩みながら、それでもダンスと向き合っていた。自分も頑張ろうと力をもらうのと同時に、やっぱり素敵な人たちだな(人間としても、ダンサーとしても、振付家としても、制作者としても)と思った。私は東京にいるの?とよく聞かれるけど、一応ここ11年くらいは東京に居る。感染症で世界は変化したけど、自分がそれでも東京に居ることを考えていきたい。関西の素敵な人たちと自分の居る東京がもっともっと柔らかく繋がっていくように、動いていくことも、今後の自分の創作の一部になっていくだろう、そう思った今回の滞在だった。大それたことはできないけれど、まずは身の丈に合った方法で、少しずつ前へ。
今回友人と話して面白かったワードが「ドラマティック病」。時々なるよね、って話になった。その症状は、とにかくドラマティックに物事を考えて、発言すること。笑。(もしかしたら、このブログ自体、そうかもしれない) あー、私は孤独、私は一人ぼっちみたいなこと。笑。そんなことを友人と話していたからか、いつもとても寂しくなる神戸からの帰り道も、冷静に元気に過ごせた。バイバイドラマティック病~。といっても時々発症すると思うのでうまく付き合っていきたい。

撮影:西岡樹里
楽しみにしていた児玉北斗さんの作品「Pure Core」も観ることができた。ダンサーの方々ととても良い創作ができたのではないかな〜と作品を観ていて思った。終演後、少しだけ北斗さんと言葉を交わせたのだけど、良いエネルギーに満ちていて私もとても嬉しくなった。「退避」で共演した益田さちちゃんも素敵だった。ダンスがやっぱり好きだと思った。そう感じられる時間をありがとうございます。
書きたいことはまだまだあるような気がするけどここらへんで。最後に、顔の大きな黒いテリア、ハッピーが昔いた場所の写真を。
